海峡映画祭 了

 柴口「市長ではなく、中尾友昭とクレジットとしたいんです」
 市長「で、どんなストーリーなの?」
 柴口「福岡在住の50代半ばの男が海響マラソンに出るドキュメントです」
 市長「おー」
 柴口「自分がこの街で生きてきた全てを、賭けます」
 市長「うん」
 柴口「…僕はフィルムコミッションもマラソン実行委員会も訪ねました」
 市長「あぁ」
 柴口「でも正直、いい顔はされませんでいした…」
 市長「・・・」
 柴口「心が折れて…それでもマラソンで歌っていた小学校を訪ねました」
 市長「あぁ」
 柴口「色んな人に小学校は絶対ムリだと言われてました…こんな時代ですし」
 市長「…うーん」
 柴口「でも…そこの校長先生は、逆に僕を励ましてくれました」
 市長「そっか」
 柴口「はい。どこの馬の骨とも知れない僕の言葉は、建物や組織には届きません」
 市長「・・・」
 柴口「でも、そこにいる個人に一人の人間として向き合ったときに届きます」
 市長「うん、そ!うん」
 柴口「市長…何のためにやってるのかと言われれば、僕は自分のためだという気がします」
 市長「そう?」
 柴口「でも心のどこかでは…」
 市長「うん」
 柴口「心のどこかでは、この街のためにやっているという想いがあります。
    市長が市長になったのも、きっとそうだったんじゃないかと想ってます」
 市長「ん、わかった…いいよ、使って」
 柴口「はい!ありがとうございます」
 市長「完成はいつ頃?」
 柴口「3月中には、と想っています」
 市長「私に会いにきて」
 柴口「ありがとうございます。あの、実は市長の同級生の近藤さんも出てくれました」
 市長「近藤って、近藤ヨーヘー?」
 柴口「はい(笑)、近藤さんも僕を支えてくれた一人です。春風さんもそうです」
 市長「(笑)…組織にはね、難しいこともある。秘書課に言って、私を訪ねて」
 柴口「はい!本当にありがとうございます」

 市長と別れ、いつの間にかいなくなった春風さんを僕は探した。

 柴口「市長と話しました」
 春風「どーやった?」
 柴口「僕は完全に翼を取り戻しました」
 春風「そっか」
 柴口「オレを止めれるもんなら止めてみろよ、です」
 春風「ん、行け!」

 僕の中にはいてくれる。ヤン・イクチュンが、佐々部清が、春風さんが、近藤さんと野村さんが、文関小学校が、宮原さんが、エリックが、田端君が、森田雄三が、どんなに小さくとも途絶えぬ千年の灯りがいてくれる。

 海峡映画祭が終わった。

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